相続税についてよくあるご質問(FAQ)

Ⅰ.相続税がかかるかどうか

Q1. 相続税はどんなときにかかりますか?

A1. 「正味の遺産額」が相続税の基礎控除額を超えると相続税がかかり、申告と納税が必要になります。正味の遺産額とは、遺産総額に一部の贈与財産を加え、そこから非課税財産・債務・葬式費用を差し引いた金額です。

Q2. 相続税の基礎控除はいくらですか?

A2. 基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。例えば法定相続人が3人であれば、3,000万円+600万円×3=4,800万円が基礎控除額です。

Q3. 法定相続人の数はどう数えますか?(養子がいる場合)

A3. 民法上の相続人(配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹)をベースに数えますが、相続税の基礎控除の計算では養子の数に上限があります。実子がいる場合は養子は1人まで、実子がいない場合は2人までを「法定相続人の数」に含められるのが原則です。

Q4. 相続人が海外に住んでいても相続税はかかりますか?

A4. 相続人が非居住者でも、日本の相続税の課税対象となる場合があります。被相続人や相続人の住所地・国籍、財産の所在地などにより課税範囲が変わりますので、国際相続のケースでは早めの検討が重要です。

Q5. 相続税の申告は誰が行うのですか?

A5. 原則として、相続や遺贈により財産を取得した人(各相続人や受遺者)が、それぞれ自分の負担する相続税について申告・納付を行います。実務上は代表相続人がとりまとめて申告書を提出するケースが一般的です。

Ⅱ.どんな財産に相続税がかかるか

Q6. どんな財産が相続税の対象になりますか?

A6. 被相続人の預貯金・不動産・株式・投資信託・貸付金・事業用資産など、原則としてすべての財産が対象です。国内財産だけでなく、一定の場合には海外にある財産も含まれます(相法3・4条)。
国税庁

Q7. 相続税がかからない財産には何がありますか?

A7. 墓地・墓石・仏壇・仏具・一定の祭具などは、通常必要と認められる範囲で相続税がかかりません。また、一定の心身障害者扶養信託財産なども非課税とされる場合があります。

Q8. 生命保険金には相続税がかかりますか?

A8. 被相続人の死亡により受け取る生命保険金は、原則として「みなし相続財産」として相続税の対象になります。ただし、「500万円×法定相続人の数」までは非課税となる特例があり、保険金受取人ごとに按分して適用します。

Q9. 死亡退職金や弔慰金はどう扱われますか?

A9. 死亡退職金や功労金は、一定額までは非課税ですが、原則として「みなし相続財産」として相続税の対象になります。弔慰金は社会通念上相当と認められる金額までは非課税ですが、それを超える部分は死亡退職金とみなされ、相続税の対象となることがあります。

Q10. 年金受給権も相続税の対象になりますか?

A10. 企業年金や個人年金など、将来の年金を受け取る権利(年金受給権)は、その権利自体の価値を評価して相続税の対象となる場合があります。年金の種類・給付条件により取扱いが異なるため、契約内容の確認が重要です。

Q11. 借金や葬式費用は相続税の計算から差し引けますか?

A11. 被相続人の借入金・未払税金・医療費など、相続開始時点で確実に存在する債務は、相続財産から差し引くことができます(債務控除)。また、葬儀代・火葬費など一定の葬式費用も控除が認められますが、香典返しや法事費用など控除できない支出もあるため注意が必要です。

Ⅲ.土地・事業承継に関する特例

Q12. 自宅の土地について相続税評価額を下げる特例はありますか?

A12. 被相続人の自宅土地などについては、一定の要件を満たす親族が相続すると、土地の相続税評価額を最大で80%減額できる「小規模宅地等の特例」があります。被相続人の居住状況・相続人の居住継続など細かな要件がありますので、事前の確認が重要です。

Q13. 賃貸アパートの土地にも小規模宅地等の特例は使えますか?

A13. 被相続人が賃貸アパートや駐車場として使用していた土地についても、要件を満たせば「貸付事業用宅地等」として評価減の対象になります。ただし居住用宅地に比べて減額割合や面積上限が異なるため、区分ごとの判定が必要です。

Q14. 農地を相続した場合、相続税を猶予してもらえますか?

A14. 一定の「農業相続人」が農地等を相続し、引き続き農業を行う場合には、相続税の納税猶予(農地等の相続税の納税猶予制度)の適用を受けられる可能性があります。継続要件や猶予打切り事由が厳格に定められているため、承継計画とあわせて専門家への相談が不可欠です。

Q15. 中小企業の自社株を子どもに引き継ぐと、多額の相続税がかかりますか?

A15. 非上場株式を後継者が承継する場合、一定の認定を受けた会社・後継者については「事業承継税制(法人版)」により、相続税の納税が猶予・免除される特例があります。認定申請や雇用確保などの要件が複雑なため、早い段階からの準備が重要です。

Q16. 山林や個人事業用資産・医療法人の持分などにも特例がありますか?

A16. 一定の山林を承継して適切に管理を続ける場合の納税猶予、個人事業用資産の相続に係る納税猶予、経過措置医療法人の持分に関する納税猶予や税額控除、特定美術品に関する納税猶予等など、個別の資産ごとに特例が用意されています。適用要件が非常に細かいため、該当が疑われる資産がある場合は個別検討が必要です。

Ⅳ.相続税の計算と各種控除

Q17. 相続税はどのように計算するのですか?

A17. まず、すべての課税財産から債務・葬式費用を差し引き、加算すべき贈与財産を加えて「課税遺産総額」を求めます。そのうえで、法定相続分に応じて仮の取得額を計算し、税率をかけて「相続税の総額」を出し、最後に実際の取得割合で各人の税額に按分します。

Q18. 相続税の税率は何%ですか?

A18. 各人の課税価格に応じて、10%~55%の超過累進税率が適用されます。たとえば2,000万円以下は10%、1億円超2億円以下は40%といった区分に分かれており、税率に応じた控除額も定められています。

Q19. 「配偶者の税額の軽減」とは何ですか?

A19. 配偶者が取得した遺産については、「1億6,000万円」か「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までの部分には相続税がかからない制度です。適用には原則として相続税の申告が必要であり、未分割の場合の扱いや更正の請求の期限にも注意が必要です。

Q20. 未成年者や障害のある相続人には税額控除がありますか?

A20. 18歳未満の相続人については、18歳に達するまでの年数に応じて「未成年者控除」が受けられます。また、一般障害者・特別障害者ごとに、一定年齢までの年数に応じた「障害者控除」が設けられており、相続税額から直接控除されます。

※民法改正に伴い、令和4年4月1日以降に相続が開始した場合は18歳未満が対象となります(同年3月31日以前に相続が開始した場合は20歳未満が対象です)。

Q21. 生前贈与は相続税の計算に加算されるのですか?加算期間は何年ですか?

A21. 被相続人から受けた暦年課税の生前贈与のうち、一定期間内のものは、相続税計算上、相続財産に加算されます。令和6年以後の贈与については、相続開始日によって「3年→7年」へ段階的に加算期間が延長される改正が行われており、たとえば令和13年以後に相続が開始した場合には、死亡前7年以内の暦年贈与が加算対象となります(令和6年税制改正)。

Q22. 孫や兄弟姉妹が相続すると相続税が2割増しになるのですか?

A22. 被相続人の配偶者と直系卑属(子や代襲相続人の孫)以外の人が相続や遺贈により財産を取得した場合、その人の相続税額は原則として2割加算されます。兄弟姉妹や甥・姪、直系でない孫への遺贈などでは特に注意が必要です。

Q23. 短期間に相続が続いた場合、「二重課税」を軽減する仕組みはありますか?

A23. 一定期間内に相続が複数回発生した場合には、「相次相続控除」により先に亡くなった人の相続で負担した相続税の一部を控除することができます。相続の間隔や取得額に応じて控除額を計算する仕組みです。

Ⅴ.遺産分割・遺言・代償金

Q24. 養子を取っている場合の注意点はありますか?

A24. 養子を相続人に含めることで、相続税の基礎控除額や生命保険金の非課税枠などが増える一方、相続税法上は算入できる養子の数に上限があります。過度な節税目的とみなされないよう、実態に即した養子縁組であることが重要です。

Q25. 不動産を長男が取得し、長男が他の相続人に代償金を払う場合、税金はどうなりますか?

A25. 一般的な「代償分割」の場合、長男は不動産を取得し、他の相続人は代償金を受け取りますが、税務上は原則としていずれも「相続」として扱われ、贈与税は生じません。代償金の額が不相当に大きい場合などは別途検討が必要です。

Q26. 遺言書と違う内容で遺産分割をしても大丈夫ですか?贈与税はかかりませんか?

A26. 相続人全員の合意で、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行った場合でも、原則として「相続による取得」と扱われますので、贈与税は課されません。もっとも、遺留分や相続人以外の受遺者が関係する複雑なケースでは、個別検討が必要です。

Q27. 公益法人や一般社団法人に財産を移した場合の課税関係は?

A27. 一定の公益法人等に対する寄附については、要件を満たせば相続税が非課税になる場合があります。一方、持分のない一般社団法人等を利用した承継については、一定の場合に相続税・贈与税が課される「特定一般社団法人等に対する課税」が設けられており、スキーム設計段階からの検討が必要です。

Ⅵ.申告・納税の実務

Q28. 相続税の申告準備として、どんな資料を集めればよいですか?

A28. 戸籍関係一式・遺言書、不動産の登記事項証明書・固定資産税評価証明書、預貯金残高証明書、有価証券の取引報告書、保険金・退職金の支払通知書、過去の贈与税申告書などを準備します。相続税申告は資料収集に時間を要するため、早めの着手が重要です。

Q29. 相続税の申告期限と納付期限はいつですか?

A29. 相続税の申告と納付は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。申告書の提出先・納付先はいずれも、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。

Q30. 遺産分割が終わっていなくても申告は必要ですか?

A30. 申告期限までに遺産分割がまとまっていない場合でも、法定相続分などにより一旦申告する必要があります。その後、分割が成立した時点で、更正の請求などにより配偶者控除や小規模宅地等の特例を適用し直すことが可能な場合があります。

Q31. 相続税を一度に払えないとき、「延納」や「物納」は使えますか?

A31. 相続税額が10万円を超え、金銭での一括納付が困難な場合には、一定の要件のもとで年賦で分割して納める「延納」を申請できます(最長20年・利子税あり)。延納でもなお納付が困難なときに限り、不動産や株式など一定の財産で納める「物納」が認められる場合がありますが、対象財産・順位・手続が非常に厳格に定められています。

Ⅶ.相続時精算課税関連

Q32. 「相続時精算課税」とはどんな制度ですか?

A32. 60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫などが贈与を受ける場合に選択できる制度です。

令和6年(2024年)1月1日の改正により、従来の2,500万円の特別控除とは別に、年間110万円の基礎控除が創設されました。

・年間110万円までの贈与

 贈与税がかかりません。将来の相続財産に加算する必要もありません。

・年間110万円を超え、累計2,500万円までの贈与

 特別控除の対象となり、贈与税はかかりません。ただし、この部分は将来の相続財産に加算されます。

・累計2,500万円を超える贈与

 超えた部分に一律20%の贈与税がかかります。この部分も将来の相続財産に加算されます。

将来、贈与者が亡くなった際には、この制度で贈与した財産のうち「年間110万円の基礎控除額を超える部分」を相続財産に合算して相続税を計算し、過去に納めた贈与税額を差し引いて精算します。

Q33. 相続時精算課税を選ぶにはどんな手続きが必要ですか?

A33. 相続時精算課税を選択する受贈者は、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、「相続時精算課税選択届出書」と一定の添付書類を所轄税務署に提出します。いったん選択すると、原則として同じ贈与者からの贈与について暦年課税には戻れない点に注意が必要です。

Q34. 相続時精算課税を選んだ受贈者が先に亡くなった場合はどうなりますか?

A34. 相続時精算課税の適用を受けた子や孫が、贈与者より先に死亡した場合、その人の相続において相続時精算課税財産をどのように引き継ぐかについて、タックスアンサーで詳細な取扱いが定められています。具体的には、特定贈与者・適用者の関係や死亡の順序によって、誰の相続において精算するかが変わります。

Q35. 贈与者が贈与をした年のうちに亡くなった場合、相続時精算課税の取扱いは?

A35. 贈与者が贈与をした年の途中で死亡した場合でも、その年分について相続時精算課税を選択できるケースがあります。この場合、贈与税と相続税のどちらで申告するか、どこまでを相続財産に含めて精算するかは、贈与・死亡のタイミングによって異なります。

Q36. 相続税がかからない場合でも、相続時精算課税で納めた贈与税が戻ることはありますか?

A36. 相続時精算課税の適用を受けた贈与について、最終的に相続税が発生しないケースでも、相続税の申告をすることで過去に納めた贈与税の還付を受けられる場合があります。この還付を受けるための申告書は、相続開始の日の翌日から5年以内に提出する必要があります。